電子ピアノ選びのコツ  お店で迷った時はこれ!

できればアコースティックのピアノで弾いていただきたいですが、東京の住宅事情から難しい場合も多いですよね?そこでもし電子ピアノを買うのであれば。。。ということでMusik Houseピアノ講師に考察をお願いしました。

電子ピアノの選びかた ─ “それぞれの特徴から最適な1台を選び出すヒント”  By Masahiro Oishi (Pianist)

携帯電話やテレビの進歩が止まらないのと同じく、電子ピアノ業界の進化も日進月歩なので、なるべくなら最新鋭の機種を買いたいとお考えの方が多いことと思います。

私もレッスンなどで機種選びのご相談をいただくことがあります。

しかし、よく耳にするのが「売り場へ行けば実機を拝見できるので、すぐに決められると思ったら発売されている各社の機種が豊富で選べなかった」というご意見。

それって単に意思が弱いんじゃないの?!というツッコミを受けそうですが、これ実際に店頭へ行ってみると本当に選ぶのに苦労するんです。見た目や色合いがどれも似ているといった都合もありますが(個人差あり)、そこで今回は店頭で悩まずにスッキリ決められるよう、各項目ごとにオススメ機種を挙げてみました。

これから買い替えや新規の購入を検討されている方々など、機種を決める参考になれば幸いです。

1.価格と性能のバランスで勝負!

カシオ:PX-S1100

前述の通り、種類が多くて選定に悩む電子ピアノですが、まずは値段と性能が程よい機種がいい!とお考えの方も多いと思います。

ピアノの鍵盤は基本的に88鍵ですが、電子ピアノの特にキーボード系では少し減らした機種が多くあります。

ただ、やはり全体の幅の感覚などはアコースティックなピアノと同じほうがいいという拘りをお持ちの方も少なくなく、このPX-S1100では鍵盤を88鍵しっかり揃えつつ、音とタッチ感も決して安っぽくない仕上がりを実現させた機種です。

2020年の新型コロナ初年度の際に「おうち時間」という言葉がよく使われましたが、この当時発売されていた先代モデル(PX-S1000)は、一時は品切れ状態になるほどの人気商品だったようで、いかに世間のニーズに合った製品だったことがよく分かる1台です。

2. レッスン用として、ピアノの感覚に近い機種をお探しのかた

カワイ:CN 29/CAシリーズ

ご家庭でピアノを弾く人口層として最も多い層が“レッスンを受講しているお子様”(またはシニア層)ですが、ご自宅の事情でアコースティックなピアノを設置できない都合で、機種選びのポイントとして非常に多いのが「ピアノに近い感覚」のモデルをお探しの方です。

この「ピアノに近い感覚」は電子ピアノが目指すべき最も基本的な方向のため、各社それぞれ工夫を凝らしたピアノに近づけた機種を発売していますが、その中でもカワイの製品は値段と性能を考えると最もコストパフォーマンスの良好な機種が多いです。

その理由は何と言っても鍵盤の構造にあり、CNシリーズはプラスチック製の鍵盤ながら内部に実際のピアノとほぼ同じタッチ感になるようなウエイトを仕込んでおり、非常にリアルな弾き心地です。またCAシリーズでは、よりハイレベルな内容になっており、グランドピアノとほぼ同じ鍵盤の構造を再現していることもあって、電子ピアノながら弾いた感触はアコースティックに肩を並べるレベルまで迫る完成度です。

ご自宅が電子ピアノの場合、どうしてもレッスン時のピアノとの性能の差を感じるという意見を聞くことがありますが、そのような悩みを極力減らすことの出来る機種であり、レッスンを受けられている方を中心に人気のあるモデルとなっています。

なかなか文字だけでは魅力を語るには限界がありますので、詳しくは店頭でぜひ体感いただければと思います。

3.見た目にこだわりたいかたはコレ!

ローランド:LXシリーズ

「趣味で楽しむものだから、自宅に長く置いても飽きない見た目がいい」という理由で選ばれることも多い電子ピアノ。

個人的にも大変よく分かる理由です。

携帯電話などのように数年おきの買い替えを行うような製品ではなく、ご自宅に置いてしまうと大きな移動もしにくい物ですので、見た目の重要度は高いと言えます。

しかも、電子ピアノの利点の1つに「カラーバリエーションの豊富さ」もあるので、選ぶ際には後悔しないように決めたいですね。

色の選択肢は各社とも一般的な機種では必ず数種類のカラーバリエーションを揃えていますが、形そのものとしてはローランドLXシリーズはかなり安定感があります。

さすがにグランドピアノを模したデザインではありませんが、実際のアップライトピアノと見間違うような外観は他社にはないデザインです。

譜面台も大きくて安定感があり、外観からの使い心地はアップライトに近い雰囲気を持っています。

4. とことん性能の限界に挑みたい方は必見。

ヤマハ:N1X(Nシリーズ)

始めに紹介したカシオPX-S1100は価格と性能のバランスという視点からリーズナブル路線でのご紹介でしたが、こちらはその真逆で価格も性能もダントツの最高位という機種です。

ヤマハと言えば泣く子も黙る日本国内はもちろん、世界でも多くのシェアを誇るメーカーとして君臨していますが、こちらは究極の電子ピアノとして開発され、プロ御用達の機種でもあります。

もちろん、ヤマハでも一般的な電子ピアノは多数が発売されていますが、やはり最上位の機種を見てしまうと、どうしても下位の機種との比較をしてしまう… という事で、今回はいきなり感もありますが、Nシリーズを紹介させていただきます。

こちらは基本的にグランドピアノを目指した機種ですが、NU1Xというアップライトに特化した機種もあり、好きな種類を選ぶことが出来る徹底ぶりです。

どちらも音を出さずに鍵盤だけの感触を目隠しで実際のピアノと弾き比べると、本当にどちらが電子ピアノなのか実際のピアノなのか分からない完成度です。

素晴らしい性能ではありますが、ここまで突き詰めてしまうと実際のピアノの新古品が買えそうな価格帯になってくる、という問題も起こるところが少し悩ましくもあります。

ここで蛇足ですが、ヤマハでは「トランスアコースティック」というシステムを搭載したグランドおよびアップライトピアノがあり、ものすごい単純に書くと、アコースティックなピアノにも関わらず電子ピアノのような使い方(消音&ボリューム調整)ができるという優れものです。ただ、こちらもオプション料金のため、高級な電子ピアノを検討される際には、買うかどうかは別としても知っておいて損はない情報かな?と思います。

さて、長々と説明が続いてしまいましたが、

最後に電子ピアノ購入のメリット&デメリットを手短に書いておきましょう。

電子ピアノ購入のメリット

・調律代が不必要(電気代もごく僅か)

・近隣への音の心配が少ない

・湿度や気温など管理に気を使わなくて済む

電子ピアノ購入のデメリット

・実際のピアノとの音色やタッチ感の差がある

・家電製品の部類のため、処分時に費用がかかる

・保証期間を過ぎた故障の修理が高額になる場合がある

これらは購入時に店員さんやメーカーの販売担当者さんからも聞くことになるかと思いますが、やはり肝心なのは自分自身が「これだ!」と思う機種が最適という例が非常に多いので、百聞は一見に如かず、ぜひ店頭などで性能や見た目、そして価格帯などをご確認いただければと思います。

※2020年の新型コロナの世界的大流行が発生してから物流や半導体の生産調整の問題の都合により、各社とも電子ピアノ在庫数の品薄状態が続いております。

機種によっては購入から納品までに数か月ほど時間のかかる場合もあり、ご購入の前にはくれぐれも納期のご確認を忘れずに行われることをお勧め致します。

快適な電子ピアノのある生活に、この文章が少しでもお役に立てば幸いです。